ロータリークラブにおけるハラスメント対策
1 ハラスメントの構造
ロータリークラブ(以下「RC」といいます。)では、過去から現在に至るまで、さまざまなハラスメントが存在した。一部は刑事事件として取り扱われ、メディアで報道されたものもある。
その構造は、主に①会員から事務局・例会会場等の職員に対するもの、②会員から米山奨学生に対するもの、及び③ベテラン会員から若手会員に対するものに分類される。いずれも、RC内の立場が上の者から下の者に対するハラスメントである。
2 ハラスメントの原因
ハラスメントの原因は、ハラスメントを行う会員において、「許されない基準」のアップデートがされていない点にある。すなわち、パワハラ・セクハラの基準が厳しくなり、不問とされていた行為が許されないものとなっているにもかかわらず、「過去の基準」に基づいて「これくらいは許されるだろう」という認識で事に及ぶものである。さらに、パワハラに関しては、「自分が正しい」「(他人の)間違いは正されるべきだ」という認識で、反駁しにくい事務局、例会場等の職員、米山奨学生及び若手会員に対し、その「正しさ」を押しつける類型も多くみられる。
3 ソフトな対策の例
基準をアップデートできない会員に対し、「間違っていますよ」と言っても無駄であるどころか逆効果である。なぜなら、そもそも周囲の意見を聞き入れることができる会員はハラスメントをしないし、周囲の意見を聞き入れないで今の地位を得た方々であるからこそハラスメントを行うのである。
そのため、ソフトな対策としては、その会員を巻き込んで「ハラスメント対策グループ」を組成するという方法が考えられる。「自分が正しい」と信じている方は、「自分のこと」としては認識できなくても、「他人のこと」としては認識できるということが往々にしてある。その際、ある程度きちんとものが言える若手の会員をその会に参加させることが必要である。
それほど会員数が多くないRCにおいては、若手を中心として、ハラスメントを行う会員とその相手方との間に緩衝帯を設けることが望ましい。たとえば、ハラスメントを行う会員には事務局に直接連絡をとらせないとか、酒席の際に、集団で囲むなどといった対策である。
4 持続性があるロータリークラブを目指して
しかしながら、これらの対策も若手会員に負担がかかる弥縫策にすぎない。そもそもRC自体が高齢化しており、人口構成が逆三角形に近くなっている状況で、せっかく入会した若手会員にそのような役割を求めることは望ましいこととはいえない。ハラスメントに限らず、単なる自分の固定観念にすぎないことを「伝統」(=変わらない価値観)として若手会員に押しつけるということがもし仮にあるとすれば、そのようなRCでは新入会員は増えることなく、いずれ淘汰されるであろう。
したがって、持続性があるRCであり続けるためには、時代の進展に応じた基準のアップデートが必要である。そのためには、若手会員の意見に耳を傾けることができる姿勢が重要であり、さらにはそのような姿勢を醸成できるRCが時代に求められているものといえる。
2025-2026ガバナー月信1月号【Vol.7 January2026 より抜粋】
2025-2026ガバナー月信2月号【Vol.8 February2026 より抜粋】
地区法務担当 川 義郎(弁護士)
所属:東京浅草ロータリークラブ
東京本郷ロータリークラブの取り組み
東京本郷ロータリークラブでは、ハラスメントを決して容認せず、被害者に寄り添う健全なクラブ運営を目指し、一丸となって改革を進めてまいります。
その取り組みとして、2026年4月1日開催の第1568回例会において、職業奉仕委員会による「思いやり劇場」と題した卓話(寸劇)を実施いたしましたので、その内容をご紹介します。
2026年4月1日 第1568回例会
職業奉仕委員会「思いやり劇場」
① 「昔はこれで育った」型パワハラ
登場人物 A:ベテラン会員 / B:若手会員
A:「君、今日の例会の司会、覇気がなかったな。」
B:「申し訳ありません。」
A:「声も小さいし、もっと腹から声を出さないと。」
B:「会社でトラブルがあって、昨日の夜寝てなくて。ちょっと座ってもいいですか?」
A:「なに!?私の若い頃はな、怒鳴られても3時間ずっと立っていたもんだ。」
B:「いやでも。。。今はハラスメントと言われる時代で…」
A:「鍛えてやってるんだ。ありがたいと思え。」
B:心の声【寝てないけど、みんなに会いたくて例会に来たんだけどな~】
弁護士解説<ポイント>
- 人格否定は典型的パワハラ
- 「指導」「教育目的」は免罪符にならない
- 団体でも“影響力”があれば成立し得る
- 経営者が社内でやれば明確に問題
問い
「御社で同じことを部長が言ったらどうしますか?」
② 「君のためを思って」型セクハラ
登場人物 A:男性会員 / B:若手会員
A:「今日もイケメンだねぇ。」
B:「ありがとうございます。」
A:「そういえば君、結婚してるの?もししてないなら紹介しようか?」
B:「あ、いや、結構です。。。」
A:「遠慮するなよ。私が君くらいの頃はもう子供が2人いたんだぞ。」
B:「え~っと。。。」
A:「冗談だよ、固いなあ最近の人は。」
B:心の声【全然冗談に聞こえないんだよなぁ~】
弁護士解説<ポイント>
- 容姿・結婚の話題は典型例
- 「冗談」は加害者の常套句
- 相手が笑っても同意ではない
- 団体の信用リスク
- 経営者は“基準を作る側”
問い
「社員に同じ発言をしたら、懲戒対象になりますか?」
③ 「ロータリーは会社じゃないから」型誤解
登場人物 A:理事経験者 / B:若手会員
B:「あの~先輩。先日の炉辺の時の○○さんへの発言が少し気になりまして…」
A:「ん?どの発言かな?」
B:「君はいつも声が大きすぎる!と語気を強めておっしゃったあの発言です。」
A:「あ~あれね。でもここは会社じゃない。ボランティア団体だよな。」
B:「でも不快に感じる人も…」
A:「嫌なら来なければいい。給料払ってるわけじゃないんだし。」
B:「でも外から見ると、クラブの印象に関わるかもしれません。。。」
A:「そんな固いこと言ってたら、何も話せなくなるよ。ロータリーは自由な場だ!」
B:心の声【自由ってのが一番難しいんだけどね。】
弁護士解説<ポイント>
- 雇用関係がなくても不法行為責任は成立し得る
- 名誉毀損・セクハラ・パワハラは民事責任の対象
- 団体の評判リスクは極めて大きい
- 役員個人の責任もあり得る
- 「辞めればいい」は二次加害
問い
「御社の取引先との会合で同じことが起きたらどうなりますか?」
